読者のみなさまへ
　良廣と私は38 年間夫婦であると共に、40 年来の友人でもありました。私達の関係は文化の壁を越えた愛で築かれました。
　良廣は日本人、私はアメリカ人です。私たちはアメリカで、シンガポールで、そして、日本では東京と福岡で学び、教鞭をとり、共に暮らしました。また国際会議や、家族や友人に会うために多くの国々へ出かけま
した。異言語や異文化を学び、境界線を越えて様々な人たちと交流することは私たちの喜びでした。
　私の最愛のパートナーである中村良廣は、10 ～ 12 年に及ぶ活動性B型肝炎に苦しんだ末、2012 年5月9日に亡くなりました。母親からの感染後12 年前までは、発症せずウイルスの保有者でした。先天的B 型肝炎は、母系血統から感染することがわかっており、良廣の母親も祖母も肝炎ウイルスの症状により亡くなっています。彼の身体はウイルスに
対する抗体がなく、ウイルス量が高かったため、どのような治療法も対処できませんでした。2000 年代初めになってやっとB 型肝炎治療薬が開発され入手可能になりました。あと僅か5年待つことができれば彼もこの薬の恩恵を受けられたでしょう。いずれにしても、私達は、その時々のB 型肝炎情報を考慮して出来得る限りのことをしました。そして、5年前私たちは限りない愛情をもったまま、後悔のない別れをしました。
　度重なる入院や手術、数え切れないほどの治療を受けましたが、ついに、医師から、これ以上できることはないと告げられる日が来ました。私たちは、その日から自宅で3週間を共に過ごしました。それはそれは2人にとってかけがえのない濃密な日々でした。考えてみてください。もし、あなたが同じ状況に置かれたら、どう過ごしますか。どのように振る舞い、どのような態度をとりますか。何を思いますか。あなたが死んだら、あなたの家族はどのような感情であなたを思い出すのでしょう
か。あなたが死んだ後、家族が感じるのはどんな言葉や表現だと思いますか。
Respect 尊敬
Communication コミュニケーション
Peace 平穏
Comfort やすらぎ
Love 愛
Life 命
良廣が亡くなったあと、私はこのようなことを感じました。私の話をとおして、私はこれらの大切なもの『gifts』をみなさんと分かち合い、私たちがどのように生きてきたのか知ってほしいのです。
私が言っているのは、詩は力強い感情が無意識に溢れ出るものであり、それは静寂の中で思い出された感情から始まるということです。
(1800 年　ウィリアム・ワーズワース)