絵本考 ― 改訂版

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著者: イエンス・ティーレ(Jens Thiele) (著), 村上 康子 (翻訳)

商品コード 978-4865610536

サイズ 25.7 x 18.2 x 2 cm

ページ数 286

発売日 2016/2/29

通常価格(税込)4,950

販売価格(税込)4,950

ポイント: 45 Pt
関連カテゴリ評論・文学研究・作家研究

『絵本考』は、DAS BILDERBUCH ASTHETIK・THEORIE・ANALYSE・DIDAKTIK・REZEPTION (『絵本 美学・理論・分析・教授法・受容』)という原題のドイツ語圏の絵本を視野にいれた、ドイツ語による絵本研究書の翻訳本です。

原書の初版が出版された2000年当時、著者のイエンス・ティーレ氏は、オルデンブルクのカール・フォン・オシエツキー大学の視覚メディア分野の教授でした。著者は、原書の「まえがき」において、「本書では、理論的、様式史的、分析的及び教育学的側面から絵本のジャンルに包括的にせまる…」と記し、専門領域における豊富な経験と哲学、芸術学、文学、教育学、心理学、社会学、情報学など多岐に渡る学問領域の知識を基に、絵本の多様性と可能性について、数多くの事例を挙げ、熱意あふれる持論をいかんなく展開しています。

著者の考えを日本語にして伝える本書は、絵本が、子どもの教育に役立つものとして捉えられて来た伝統的な考え方を見直し、媒体としての絵本の見方、考え方に新たな視点を与えてくれる書です。第1章「絵本研究に関連のある問題領域」、第2章「絵本の芸術的な状況」、第3章「絵本の物語構造に関する理論」、第4章「絵本分析」、第5章「教育学的視点からの絵本」、第6章「絵本の受容について」、第7章「絵本の展望」から構成されており、本書の記述全体を通して、著者の絵本研究に対する思いが伝えられていますが、1章ずつが独立しているので章ごとに切り離して読むことも出来ます。特に、第4章では、『ラウラとふしぎなたまご』(岩波書店出版)、『人食い女』(未邦訳)、『おぢさん』(小学館出版)、『きみはおおきくて ぼくはちいさい』(ソニーマガジンス出版)、『こうえんで… 4つのおはなし』(評論社出版)の5つ作品を取りあげ、5人の執筆者が、それぞれ1冊の本を対象にして行った、伝記的分析アプローチ、観念連合的分析アプローチ、劇作法的分析アプローチ、テーマ的分析アプローチ、受容者論的分析アプローチの5つのアプローチによる分析が提示され、絵本研究の奥深さを感じさせる議論が展開されています。原書が、ドイツ国内の児童文学の専門雑誌で、広い視野を持って著された基本的な絵本研究書であると評価されていることからも考えられることですが、本書も媒体としての絵本を概観するのにふさわしい書と言えます。原書が出版されてから15年以上が過ぎた今でも著者の発言は色あせることなく、読者に新鮮な刺激を与え絵本研究に向かう興味関心を喚起させてくれます。

『絵本考』は、絵本や絵本研究に関心を持つ人ばかりでなく、児童文学や教育、グラフィックデザインなどのメディアに関心を持つ人にとって、見逃せない1册です。グローバルな視点で研究対象を見る目を養う上でも一読の価値があります。是非お手に取ってご覧になられることをお勧めします。

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